日本と南米の被害地震年表から巨大地震の連動を追う

1世紀~15世紀までの被害地震年表(日本と南米)
2018年09月13日の記事「海外の地震、被害地震・歴史地震」の中で、「取り組みたい企画」のことを取り上げました。なぜこのシリーズを始めたかという理由を知りたい方は、まずはこの記事から読んでください。

そして、今回いよいよそのシリーズ企画の1回目です。

所長・ナオミンの不眠不休の努力がありまして、ひとまず、1世紀~15世紀までの、日本と南米の被害地震年表をとりまとめましたので、ここで紹介したいと思います。
※1~15世紀の日本と南米の被害地震年表はこのページの下部にあります。

大阪北部地震・阪急
2018年6月18日に発生した大阪北部地震、阪急電鉄・茨木市駅の様子。Twitter画像。
(画像の出典) https://ameblo.jp/dodson/entry-12384987521.html


過去の南米の情報は現在皆無
今回銀河研究所で調査した 1~15 世紀の被害地震年表では、「過去のデータ集めは非常に厳しい」と思い知らされました。
まず、南米の被害地震の情報がほぼ壊滅状態です。この情報をなんとか収集してこないと、この期間の、日本・南米間の比較が極めて困難です。しかし、この期間は、日本でも古文書や地質調査に頼るところが多く、また、その期間に発生したすべての地震を網羅しているわけでもなく、そもそも歴史上の被害地震のデータ収集・網羅性は専門家でも容易ではないだろうと、痛感します。ましてや地震の規模=マグニチュードの推定はさぞ厳しい壁だろうと感じます。
そこで、ネット上で4箇所の出典を探し出し、それらを銀河研究所で合成=マージして、今回の被害地震年表を作成しました。出典元の皆さまにはこの場をかりてお礼を申し上げます。

   (出典)Wikipedia より。 https://ja.wikipedia.org/wiki/地震の年表_(日本)
   (出典)宇津徳治氏「世界の被害地震の表」 より。 http://iisee.kenken.go.jp/utsu/
   (出典)被害地震年代表(PDF版) より。 http://niigatanosora.web.fc2.com/kindle-hon/higaizishin.pdf
   (出典)JICE・ 国土技術研究センター より。 http://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary12


古文書、侮りがたし
さて、今回の「銀河研究所・被害地震年表」は 1~15 世紀の日本と南米ですが、今後、これの16世紀版、17世紀版・・・21世紀版と順次作成して、徐々にこのブログで公開していきたいと思います。
さて、今回初めて年表を作成して感じたことは、「古文書、侮りがたし」です。古代~近世の地震は、古文書か地質調査に依存するはずですが、日本の場合、古文書の果たす役割が極めて大きいことが実感できました。「メモ魔・日本人」の面目躍如です。海外の同様の歴史資料をあたるだけの実力がないのでなんともいえませんが、被害地震の記録がこんなに古くから、そして多くの件数が記録されている国はそうそうないと感じています。

首都直下地震シミュレーション
首都直下地震のシミュレーションCG
(画像の出典) http://buzz-b0x.com/archives/12760


巨大地震に周期はあるのか?
今回の被害地震年表では、7世紀までは史料が比較的少ないと思われるので(収集できたデータが少なそうに感じるため)、8世紀から発生件数を比較してみました。

8世紀=5件
9世紀=11件
10世紀=2件
11世紀=3件
12世紀=2件
13世紀=4件
14世紀=5件
15世紀=12件

9世紀と15世紀が断トツです。そしてその間、500年ほど空いています。こうしてみると、なにかしら「周期」を感じてしまいます。
以前、NHKスペシャルで気候変動を取り上げていました。その中で、木の年輪の中の「酸素同位体」の密度を測定することによって大昔の降水量を知ることができると紹介していました。そして、番組内ではその研究によって、700年に一度、降水量が激増する、つまり地球の気候が激変する周期があるようなことを紹介していました。なんだか地震にも同じことがあるように年表をみて思い起こしてしまいました。



古文書上の地震
古文書に登場する地震
画像の出典) https://blog.goo.ne.jp/kimito39/e/4342036f9da90a4274073846b8104090


歴史資料は教えてくれる
我々は無意識に、地震の起きやすいところを近視眼的に思い込んで、決めつけているふしがあると思います。たとえば、南海・東海・三陸沖・関東などです。
たしかにこれらの地域は巨大地震を何度も経験している地域で、現代の多くの人々がイメージしがちです。
しかし、今回銀河研究所で調査した 1~15 世紀の被害地震年表を眺めてみると、意外な地域が顔を出しています。奈良県・明日香村や、850年嘉祥地震の山形県、1154年の富山県などです。
年表上で改めて俯瞰してみると、実は、「日本で地震被害を受けない地域はないのかもしれない」という思いにかられます。


繰り返される悪夢
つい先日、2018年6月18日に発生した「大阪北部地震」のとき、周辺部の断層も話題になりました。例えば、京都です。京都は「千年の都」というイメージから、ややもすると「地震に強い都市」という印象があるかもしれませんが、歴史的に何度も繰り返し地震に襲われています。
1596年に発生した慶長伏見地震(けいちょうふしみじしん)は有名です。伏見城の天守をはじめ、東寺や天龍寺などが倒壊し、死者は1,000人を超えたと伝わっています。
※ちなみにこの頃の日本の人口は、1,000万人程度、実に現在の12分の1です。
 (参考)総務省「我が国における総人口の長期的推移」 http://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf
そして、今回銀河研究所で調査した 1~15 世紀の被害地震年表で見てみると、京都が震源もしくは被害範囲に含まれる地震は少なくとも 10件 発生しています。より広範な南海地震も含めると、 17件 にのぼります。少なくとも100年に1回は巨大地震に巻き込まれていることになります。
京都の断層
京都の断層 (画像の出典) http://www.soudankan.com/npo/dansoumap.html


「たまたま」を「当然」と思い込む
1~15世紀の日本において、地質調査や古文書から得られた過去の地震だけでもこれだけの件数にのぼりました。観測機器やデジタルデータのなかった時代です。それらがあったとすれば、たちまちもっと多くの地震が観測・記録されたのではないかと想像すると背筋が凍ります。
我々は、ついこの前まで、「たまたま地震が少なかった希少な時代」に暮らしていたのかもしれません。「たまたま」を「当然」と思い込んでいたともいえます。我々の目を醒めさせたのが忘れもしない、2011年3月11日に発生した「東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)」です。我々の意識は180度ひっくり返りました。
そして現在、我々は日々地震速報に不安を覚え、家族や友人の心配をしている状態です。日本と地震、やはり向き合っていくしかなさそうです。


苦労した点・出典・お願い事項
(1)1世紀~15世紀において、日本の被害地震の記録は比較的容易に採取できます。
(2)しかし、同期間の、南米の被害地震については、入手が困難です。
(3)今回の被害地震年表の作成にあたっては、下記の情報から出典・引用しています。
   この場でお礼を申し上げます。
   (出典)Wikipedia より。 https://ja.wikipedia.org/wiki/地震の年表_(日本)
   (出典)宇津徳治氏「世界の被害地震の表」 より。 http://iisee.kenken.go.jp/utsu/
   (出典)被害地震年代表(PDF版) より。 http://niigatanosora.web.fc2.com/kindle-hon/higaizishin.pdf
   (出典)JICE・ 国土技術研究センター より。 http://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary12


※「○○○の情報は、このサイトを見ればいいよ」というアドバイスがありましたら、コメント欄でお知らせくだされば幸いです。

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 ginga.20180910[あっとまーく]gmail.com
 [あっとまーく]の部分を半角の @ に変更してお送りください。

みなさまのご協力をお待ちしております。



地震年表_1_15世紀
 

さて、今回の「銀河研究所・被害地震年表」は 1~15 世紀の日本と南米ですが、今後、これの16世紀版、17世紀版・・・21世紀版と順次作成して、徐々にこのブログで公開していきたいと思います。


 今後とも 銀河研究所[GINGA Laboratory]をよろしくお願いします。

(編集者: 所長・ナオミン)
(編集者: 特任研究員・くぼっさん)