あのベルギー戦を振り返る

2018年12月8日(土) 午後9時から、NHKスペシャル『ロストフの14秒 日本vs.ベルギー 知られざる物語』が放送されました。

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▲NHKスペシャルのウェブサイト

▼NHKスペシャルの予告動画(出典:NHK http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20181208_2)

今回は地震からかなり離れますが (^^;
年末ということもあって、銀河研究所なりに、あのベルギー戦を振り返って、地震ではなく今後の日本サッカーの行く末を大胆にも占ってみたいと思います。

今回のNHKスペシャルのすごいところは、あの最後の14秒の大逆転劇を冷静に分析するために、日本代表の選手はもとより、ベルギーの代表選手、あるいは、かつての日本代表監督など世界中のキーマンを訪ね歩いている点です。さすがはNHKです。スケールが違います。

まぁ、そんなこんなで、せっかくなので銀河研究所もこの番組をじっくり研究して、分析をまとめることにしました。
※あくまでサッカーファンがまとめた記事です。いかなる責任も負いません! (^^;




ベルギー戦最後の14秒とは・・・

その試合は、2018年7月2日(月)21時(日本時間:7月3日午前3時)に始まります。

日本代表は、南アフリカに続き、ベスト16進出という快挙に加えて、「赤い悪魔」ベルギーと互角に戦うどころか、後半戦ではそのベルギーを0点に抑えた上に、2点を先行していました。

誰もが「日本が初めてベストエイトに進出すると」という期待を抱いてしまいました。



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▲日本×ベルギー戦の出場選手
(出典:サッカーダイジェストWeb https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=43359)

流れが変わるのは、後半20分、日本が2点先行のまま、ベルギー側の選手交代でした。
ここから「赤い悪魔」の怒涛の反撃が始まります。

長友は番組の中で「同点になるなと思いました」と語っています。

本田の選択肢は2つ。ここで追加得点を狙うか、延長戦を見越した引き延ばしか、です。
しかし、日本代表はこのベルギー戦の前の試合ポーランド戦で、決勝トーナメント進出を確実なものにするため、およそ10分におよぶ退屈な「パス回し」をしました。これは世界的な非難を浴びました。

それもあってか、あるいは、グループリーグでの対コロンビア戦での本田のコーナーキックから得点した経験値を生かしてか、ここで本田は追加得点を狙うべくコーナーキックをします。

番組名ともなった「ロストフの14秒」はこの本田のコーナーキックから始まります。
その流れと、番組を見た上での銀河研究所の着目点・分析は下記のとおりです。


【1】本田のコーナーキックを、ベルギーのゴールキーパー・クルトワが見事にキャッチ。
→→日本のセットプレーを入念に研究していたというベルギー。よどみなくキャッチして阻止。ここまできれいにセットプレーを阻止されると思えていなかったフシが日本側には課題として残ります。ここでまず、ベルギーの1つ目の戦略が光った。


【2】ここからデブルイネの見事な中央突破(カウンター攻撃)が繰り出される。
→→デブルイネは手薄だった日本側ゴールをめがけて時速30キロで正面突破を図る。そして、その先で待ち構えた山口蛍の介入を見事なプレーで振り切った。オシム日本代表元監督は、「(山口は)ファウル覚悟で行くこともできた」と語る。日本側はこのカウンター攻撃を阻止できなかった。ここでベルギーの2つ目の戦略が光った。


【3】そしてデブルイネからルカクにパスが渡ると思いきや、ムニエにパスが渡る。実はこのとき、ムニエがフリーになってしまっていた。
→→ルカクは長友がマークしていた。しかし、その向こうのムニエがノーマークだった。この誤算は日本にとって大誤算となる。この瞬間、フィールド上では、デブルイネ・ルカクがどうしても目を引いてしまうが、香川か誰か他の選手がムニエをマークすることができなかったものか。大いに疑問が残る。ここでベルギーの3つ目の戦略が光った。


【4】ベルギーのマジックはさらに続く。ボールを受け取ったムニエは、ゴール前に陣取っていたルカクにパスして、ルカクがシュートを決めるのではないかというフォーメーションの時、ムニエから放たれたパスは、ルカクの股下を素通りして、その向こうのシャドリに渡る。そしてシャドリがシュートを決めた。この瞬間、勝者はベルギーに確定した。
→→この瞬間、ルカクは長谷部にマークされており、自分がゴールするよりもより確度の高いシャドリにゴールを委ねる決断をした。それは、味方の監督すら一瞬「なぜ?」という表情になった。ここでベルギーの4つ目の戦略が光った。


偶然でも、技術でも、フィジカルでもなく、このようにベルギーには複数の戦略があったといわざるを得ません。「サッカー脳」によるものすごい情報処理能力です。

たしか長友選手も、番組内で「自分たち以上のものすごい量の情報処理をしていたように思えた」と語っています。

複数の戦略が、この14秒間に瞬時に処理されたものと思われます。
「赤い悪魔」恐るべしです。
「サッカー脳」恐るべしです。




さて、最後に検証したいことが・・・

確かに「西野ジャパン」は実績を残しました。これまで日本のサッカーファンがずっと待ち望んできた「ベストエイトに進出するかも」という希望をわずかな時間帯でも現実のものとした実績です。

これは歴然とした功績です。

しかし、それだけですべてを計るのは早計です。

なぜなら、それはワールドカップロシア大会というその「瞬間」だけのことで、決して「歴史」ではないからです。銀河研究所のコンセプトでいうならば、数々の巨大地震に襲われてきた日本のある特定の「静謐期(せいひつき)」だけを指して、まるで日本に以前から巨大地震が無かったかのように言っているからです。

たとえば、「日本には以前から巨大地震が無かった」という文脈と、「かつては日本は巨大地震に襲われたが、今現在は静謐である」ということはまるで文脈が違います。

もし日本代表の、2018年ロシアワールドカップのことを語るのであれば、「今までは決勝リーグに出場がままならなかったけれども、今回のワールドカップを機に、そうしたチャンスも狙えるようになった」というのが冷静な分析だと思います。

こうした冷静な分析が必要だと強調するには、現在の我が国に問題があります。

1点目は、2018年11月19日、日産のカルロス・ゴーン元会長が、
金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕されました。

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なるほど、法律上はそうした容疑で逮捕されることはあり得るでしょう。しかしながら、2兆円を超える負債を早期に返済して、日産を一時期であれ、販売台数世界1位の自動車メーカーにまで押し上げてくれた功績
(日産・ルノー世界連合の販売台数で)はどこへいったのでしょうか。

たしかに現行法には触れました。違法は違法です。しかし、だからといって、これまでの歴史や積み重ねをすべて否定するのであれば、我が国がかつて歴史上犯したたったひとつの汚点で我が国の歴史すべてが否定されるのでしょうか。そんなことは常識的にあり得ません。善悪等しくあったのです。

ヴァヒド・ハリルホジッチ監督で言いかえれば、低迷していた日本代表チームを立て直した功績をすべて忘れて、ベルギー戦の健闘を、たった一時期の日本人監督の功績として、すべてを粉飾しているかのように思えてなりません。これを歴史や愛国心とはきちがえては、歴史や愛国心がむしろかわいそうです。


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一番勝たせたのは誰?日本代表監督勝率ランキング
https://qoly.jp/2018/04/13/japan-coach-winning-percentage-ranking-ksn-1

日本サッカー協会は正しいKPIを提示せよ
https://news.yahoo.co.jp/byline/murakamiashishi/20180501-00084667/


もう1点は、今年初頭に勃発した日本大学のアメフト部、内田監督の事件です。類似した事件は、体操界、ボクシング界、レスリング界、そして直近では、かつて暴行を受けた
貴ノ岩が今度は加害者となって引退した事件です。他にも類似した事件はあるでしょう。

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もちろん暴力やパワハラがいけないことは、子どもでもわかります。自明の理です。

しかし、そうなった深遠な背景は後回しです。とにかくダメ、NGということで、社会全体で当事者をバッシングします。それも二度と社会復帰できないぐらい。

こうした現象は近年、ネットの威力もあって、とどまるところを知らない勢いです。かつて、小保方さんという女性もそういう目に遭いました。

我が国は法治国家です。北朝鮮とも違い三権分立もあるということが前提です。ならば、本当に違法行為・脱法行為をした、あるいは違法行為ではないが、道義的には問題があるなど、最終的には司法が判断するのがまずは本筋です。

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決してかつての隣国のような「人民裁判」がイニシアチブをとってはなりません。

しかしながら、いまの我が国のネットは毎日が「人民裁判」のようです。下手をすれば、それを世論とはきちがえて、政治も司法もそれらに流されてしまいかねない危うさを感じます。ならば、政治家も官僚も裁判官も検察官も弁護士も不要です。

いま2018年6月17日に放送されたもうひとつのNHKスペシャル「這い上がれ “西野ジャパン”の30日」を観返しています。

ハリルホジッチ監督の後、近年まれにみるFIFAランキング61位にまで低迷したのもこの時期です。このとき、カウンター攻撃重視のハリルホジッチ元監督に対して、西野監督はどうやら従来の日本の得意技=パス回しサッカーへの戦略変更をしたようです。

この番組では、日本がもともと得意だったパスサッカーにスピードを加えるのが西野ジャパンの戦略のように紹介していました。確かにこの点は否定できません。ワールドカップ本番ではパス回しは日本の勝利に重要な役割を果たしました。

しかし、他方で、ベルギー戦での原口元気選手のカウンターによる先制点も見逃せませんし、予選リーグではPKやセットプレーも非常に重要な得点源でした。

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ようは、ハリルホジッチ元監督の指導もあるし、西野監督の指導もある、あるいはそれ以前の監督の指導だって資産として生きてきた結果が今回の源です。

国家百年の計とはよく言いますが、こんなその時の瞬間だけで、褒めたりけなしたりするようでは、百年どころか百秒ももたないと思うのです。

地震を観察するということは、自分の時代だけではなく、先祖の時代も、未来の時代も両翼を気にかけなければならないことを知ります。

「瞬間的な情緒論」だけでしか世論が形成されないことをサッカーのことのみならず、災害をも超えて、お粗末感を感じざるを得ません。

災害でもサッカーでも何でも、ベルギーのような「戦略的脳」が必要とされる時代に思えます。

ネットで叩くことをやめて、真の戦略が議論されることを願って、今日は締めくくりたいと思います。



 今後とも 銀河研究所[GINGA Laboratory]をよろしくお願いします。
 URL: http://gingalab.livedoor.blog

(編集者: 所長・ナオミン)
(編集者: 特任研究員・くぼっさん)